ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「チャコは相変わらずだなー」
「ちょっと頭叩かないでよ! バカになるじゃん!」
「大丈夫。もうバカだから」
「はあ!? 航平のほうがバカじゃん!」


 言いあいを始める二人にそれを見ていた恵は頭を押さえてため息をついている。


「もう、あんたらうるさい! しっ! 周りに迷惑!」
「「……ごめんなさい」」


 恵にたしなめられ、チャコと航平はしゅんと項垂れた。


「ふふっ、素直でかわいい」
「かわいくないわ……」


 その光景に由香は楽しそうだが、恵はずっと頭を抱えている。


「もうこいつら小学生にしか見えないんだけど……」
「山下くんのちょっかいも、すごくわかりやすくて、かわいらしいしね」
「いや、高校生がやってもかわいくないから……チャコは全然気づいてないし……」


 航平は事あるごとにチャコにちょっかいを出す。それは中学のときからずっとだ。由香は高校から一緒になったから知らないが、恵はその光景をずっと見てきた。憐れなほどに航平の好意はチャコに伝わっていないのだ。


「まあ、この調子だと何も進展しなさそうではあるかな。天使さんとの仲も深まってそうだし」
「いやー、実際どうなんだろうね。小学生をかわいがってるような感覚かもよ?」
「それはー、まあ否定できないかもね」


 由香はチャコと航平を見ながら同意した。


「おい、チャコ。お前のせいで怒られただろうが」
「航平のせいでしょ! さっさと自分の班戻りなよ」


 チャコと航平は小声でまだ言いあっている。恵は再び頭を抱えてため息をついた。
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