ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 演奏が始まって一、二分経つと、曲調がさらに陽気で賑やかなものに変わった。特徴的なリズムは一度聴いたら忘れられない。チャコもそのリズムに合わせて手を叩く。

 そんなふうに楽しんでいれば、突然ジャンがギターを置いて立ち上がり、チャコのほうへやってきた。


「ジャン?」


 ジャンはチャコの腕をつかむと少しスペースの空いているところまで引っ張っていく。そしてその場で軽やかにステップを踏みはじめた。


「えー! ジャン踊れるの!? すごい!」


 ジャンの横で手拍子しながら笑っていれば、ジャンが手で来い来いというような仕草をしてくる。踊れと言っているようだ。


「え、ムリムリ! 踊ったことないもん」


 だが、ジャンは諦めずに促してくる。ジャンはずっと楽しそうだ。


「適当にしかできないからね!」


 チャコは楽しい空気に押されてついにジャンと一緒に踊りはじめた。適当に飛び跳ねているだけだが楽しくてたまらない。リズムに合わせて手を叩きながら、ジャンと一緒に飛び跳ねる。そうしていれば、突然ジャンが片手をチャコの手に重ね、反対の手をチャコの腰に回してきた。そのまま曲に合わせてくるくると回りはじめる。男の子との接触に胸がドキドキするが、それよりも一緒に踊るのが楽しくて楽しくてしかたない。


「あはは! ジャン、楽しいね!」


 ジャンも満面の笑みを浮かべている。ジャンとこの時間を共有できるのがとても嬉しい。チャコは大きく笑い声を上げながら、ジャンとその音楽をめいっぱい楽しんだ。
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