ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
第四章 アンサンブル
1. ボーカリスト
新年度を迎え、チャコは高校三年生になった。今もジャンとは毎週水曜と金曜に会っている。春になって暖かくなると、二人はまた河川敷で過ごすようになったが、ときどきは『Joy』にも顔を出している。
天気のいい今日は河川敷で過ごしていた。ぽかぽか陽気が心地よくて、チャコはその場に寝そべって、ジャンの演奏を聴く。何とも贅沢な時間だ。
「やっぱり春って好きだなー。気持ちいい。このまま寝ちゃいそう」
目をつむって、春の空気を楽しむ。本当にそのまま眠ってしまいそうになっていたら、頬をつつかれる感触がして慌てて目を開けた。
「っ!? びっくりしたー。もう近いって」
ジャンがチャコを真上から見下ろしていた。その状況にチャコの心臓はバクバクいっている。すぐに耐えられなくなって、ジャンを押しのけるようにしながら起き上がった。
ジャンは何か言いたげな顔でじっとチャコを見つめてくる。
「もう、ちゃんと聴いてるからそんな目で見ないでよ……」
チャコがそんなふうに小さく文句を言うと、ジャンはチャコの唇を指先で叩いた。
「何歌う?」
ジャンは何も言わずにもう一度唇を叩く。これは何でもいいから歌えということだ。歌ってほしいものがあるときはギターを弾いてくれる。だが今はギターには触れずにただチャコの唇に触れるだけだった。
「わかった。じゃあ適当に歌うね」
最初に頭に浮かんだ曲をアカペラで歌う。ワンコーラスだけ歌って、これで満足かとジャンに目を向ければ、ジャンは突然ギターをしまい、その場に立ち上がってしまった。
天気のいい今日は河川敷で過ごしていた。ぽかぽか陽気が心地よくて、チャコはその場に寝そべって、ジャンの演奏を聴く。何とも贅沢な時間だ。
「やっぱり春って好きだなー。気持ちいい。このまま寝ちゃいそう」
目をつむって、春の空気を楽しむ。本当にそのまま眠ってしまいそうになっていたら、頬をつつかれる感触がして慌てて目を開けた。
「っ!? びっくりしたー。もう近いって」
ジャンがチャコを真上から見下ろしていた。その状況にチャコの心臓はバクバクいっている。すぐに耐えられなくなって、ジャンを押しのけるようにしながら起き上がった。
ジャンは何か言いたげな顔でじっとチャコを見つめてくる。
「もう、ちゃんと聴いてるからそんな目で見ないでよ……」
チャコがそんなふうに小さく文句を言うと、ジャンはチャコの唇を指先で叩いた。
「何歌う?」
ジャンは何も言わずにもう一度唇を叩く。これは何でもいいから歌えということだ。歌ってほしいものがあるときはギターを弾いてくれる。だが今はギターには触れずにただチャコの唇に触れるだけだった。
「わかった。じゃあ適当に歌うね」
最初に頭に浮かんだ曲をアカペラで歌う。ワンコーラスだけ歌って、これで満足かとジャンに目を向ければ、ジャンは突然ギターをしまい、その場に立ち上がってしまった。