ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ジャン。ねぇ、ジャン」


 ジャンの歩くスピードが速くて足がもつれそうになる。


「ジャンってば。もうちょっとゆっくり」


 チャコがそう言えば、ジャンは足を止めてチャコを振り返った。チャコの姿を上から下まで確認し、今のチャコが速く歩くのは難しいと気づいたようだ。

 ジャンは申し訳なさそうな表情をすると手を繋いでいるのとは反対の手でチャコの頭を優しく撫でた。ごめんと言われているような気がした。

 そのあとはチャコに合わせてゆっくりと歩いてくれた。



「ねぇ、こっち夏祭り会場と反対だよ?」


 その言葉にジャンは困ったように微笑んでから、でも、進行方向は変えずに歩き続けた。そうしてやってきたのは、クリスマス・イヴに訪れたあの丘の上だった。
< 71 / 185 >

この作品をシェア

pagetop