ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「あはは! ジャンそんな曲も弾けるの?」


 ジャンが弾いているのは、遠くからも聞こえてくる炭坑節だ。歌詞はよく知らないから、ハミングでチャコも参加する。

 するとジャンは顎でチャコを指し、何かを訴えてくる。だが、さすがにそれだけでは何を言いたいのかわからない。頑張って考えてはみたが、どうしてもわからなくて、チャコはジャンに向かって首を傾げた。

 それを見たジャンはしょうがないとでもいうような顔をすると、ギターを置いて立ち上がり、チャコの手の平に『おどれ』と書いてみせた。


「え、おどれ?」


 ジャンはまたギターを持つと炭坑節を弾きはじめる。盆踊りを踊れと言っているらしい。


「盆踊りのやり方とか知らないんだけど……まあ、いいや。適当に踊ってあげる!」


 チャコは以前見たことがある動きを真似てそれっぽく踊ってみた。ジャンは大層満足そうな顔をしている。お気に召したらしい。


「ふふっ。二人だけの夏祭りだね」


 その言葉が嬉しかったのかジャンは満足そうに笑っていた。
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