ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 歌い終わるとジャンがチャコの唇に再び触れてくる。チャコはまた歌を催促されるのかと思った。けれど、それは触れたまま離れず、優しくそこを撫でてくる。その感触に胸を高鳴らせながら受け入れていれば、その手がそっとチャコの頬へとスライドしていった。そしてそこをすりすりと撫でられる。


「ジャン?」


 チャコの問いかけにも構わず、ジャンは頬を撫でさする。ジャンの温かな手が触れるのが気持ちよくて、チャコは目を閉じてその感触に酔いしれた。




 チャコの告白が原因で、距離を置かれるかもしれないと警戒していたから、ジャンからの接触が嬉しくてたまらない。振ったくせにという気持ちもなくはないが、好きな人から触れてもらえるのならば、チャコはそれを突っぱねるよりも受け入れていたかった。そして、ありのままの想いを伝えていたかった。


「ジャン、好きだよ」


 想いを伝えれば、ジャンは微笑んでくれた。
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