ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 歌い終えて、チャコは思わず言葉を漏らした。


「今のすごく気持ちよかった」


 ジャンはどう感じたのだろうかと目を開けて表情を窺えば、そこにはポロポロと涙をこぼすジャンの姿があった。


「え? どうしたの? ジャン。泣かないで?」


 ジャンの涙を指でそっと拭う。けれど、それは次から次に溢れて止まらない。それでも拭い続けていれば、ジャンがそっとチャコのほうに手を伸ばしてきて、チャコの唇を優しく撫ではじめた。そして、その手はゆっくりと移動していき、頬を通り過ぎて首まで到達する。そのまま首の正面まで移動し、ジャンはチャコの喉を優しく撫ではじめた。

 その行動でチャコはわかった。チャコの歌声が引き金になったのだと。どうして泣いているのかまではわからない。でも、今はとにかくジャンの好きにさせようとそのまま大人しく撫でられていた。

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