ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 しばらく続いたそれはジャンの手が移動したことで終わりを迎えた。ジャンの手は首の後ろまで移動し、ゆっくりとチャコを引き寄せる。チャコは抵抗せずにそのまま身を任せた。

 グッと二人の距離が近づく。そして、次の瞬間、ジャンの唇がそっとチャコの喉に触れた。それはまるで神聖な儀式のようだった。

 ジャンはすぐに離れるとそのまま俯き涙を流している。チャコはそんなジャンを放っておけなくて、両手で優しく包み込み、そっとその背を撫でてやった。



 しばらくして落ち着いたジャンはいつもの微笑みを浮かべ、チャコの額に軽くキスをした。チャコは少し驚いたけれど、ジャンの空気がいつものそれに戻ったのがわかったから、何も言わずにただ微笑んだ。




 ジャンはやはり何かに苦しんでいるようだ。でも、彼は決してその理由を教えてくれないだろう。ならばせめてジャンのそばにいたいとチャコは今までよりも強く強く思った。
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