ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~

3. 創り出す

 ジャンが泣いたあの日からしばらく経ったとある日。チャコは河川敷に着いて早々に丘の上まで連れてこられた。



「今日は何弾くの?」


 ギターを取りだしたジャンに問いかけると、すぐにジャンの指がきれいな音を奏ではじめた。けれど、それは何かの曲を弾いている感じでもなくて、同じフレーズが繰り返し流れてくる。

 それは、とてもきれいなアルペジオだった。



 しばらく繰り返してそれを止めると、ジャンはチャコの唇を叩いてきた。


「何歌う?」


 その問いに対してジャンは先ほどと同じ演奏を繰り返した。


「え、それ何歌えばいいの? 何かの伴奏?」


 ジャンは再びチャコの唇に触れてくる。


「それと同じふうに歌えばいいの?」


 今度は首を横に振って否定された。違うらしい。さすがにどうしていいかわからなくて困っていれば、ジャンが宙に何か文字を書きはじめた。


「わかんなかった。もう一回」


 チャコが催促すれば、もう一度同じようにジャンは宙に文字を書く。意識して見ていればすぐにわかった。


「わかった! 『自由』?」


 ジャンは正解だというように微笑んだ。

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