ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 ジャンの音を聴きながら、メロディーを考えてみる。

 しかし、そんな経験はないから簡単には思いつかない。必死に頭をひねって考えようとしていたら、ジャンが演奏を止めてチャコのほうに手を伸ばしてきた。

 また唇に触れてくるのかと思えば、それはそっとチャコの目を覆ってきた。その感触にチャコは自然と目を閉じる。ジャンの手のぬくもりが心地いい。しばらくそうされていれば、不思議と落ち着いた気持ちになってくる。ジャンの手が離れてもそのまま目をつむっていれば、またジャンがギターを奏ではじめた。


 目を閉じて聴いていると、だんだんとそのギターに声を重ねたい気持ちが湧いてくる。チャコは途切れ途切れに思い浮かんだメロディーを口ずさんでいった。


 きっととてもたどたどしいものだったと思う。それでも繰り返し聞こえてくるジャンのギターに励まされるように、思いのままにチャコの歌を口ずさんだ。
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