ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 ジャンが隣でメロディーを奏でてくれる中、チャコも一緒にそれを口ずさみながら、少しずつ言葉を当てはめていった。二人が生み出した曲はとても明るい雰囲気を持っていたから、自然と歌詞も明るいものになってくる。ジャンとの楽しい日々を思いだしながら、チャコは言葉を紡いでいった。


「よし、できた! 歌うからギター弾いてくれる?」


 ジャンの伴奏に合わせて、今できたばかりの歌詞で歌ってみる。自分の想いが曲に乗って流れていくのが楽しい。愛しさが増していく。音楽で自分の気持ちを表現することができるのだとチャコは初めて知った。


「ジャン! やっぱりジャンとの音楽は楽しいね! 大好き! ねぇ、この曲もっとちゃんとした曲にしたい。これだと短いからAメロ・Bメロ・サビみたいにしたい」


 チャコのその願いをジャンは最初驚いた顔で聞いていたが、すぐにいつもの微笑みを浮かべて、はっきりと頷いてくれた。


「ありがとう、ジャン! 嬉しい」


 嬉しくてにこにことしていれば、ジャンの手でそっと頬を包み込まれた。チャコはその感触をもっと楽しみたくて、自分から頬を擦りつけるようにする。この行為も二人の間ではすっかり馴染みのものになっていた。


「ふふっ。ジャンの手、あったかくて好き」


 そのぬくもりを一頻り楽しんだあと、二人はまた音楽を作っていった。ジャンのギターに合わせて音を紡いでいく。上手くいかなくて困ったときには、ジャンがギターでアドバイスをくれる。そこには二人だから作れる音楽がある。同じ目的に向かって、二人協力して何かを成し遂げようとしているこの時間をチャコはとても愛おしく思った。

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