ギター弾きの天使とデュエットを ～言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る～

「できた……できたよね？　まだ歌詞はサビだけだけど、ちゃんと曲にはなってるよね！」


　一通り作り終えて、確認するようにジャンに問えば、ジャンはそれを肯定するように微笑んでいる。それを見て本当に作り上げたのだという実感が湧いてきた。身体中が喜びで満たされていく。



「すごいね、ジャン。めちゃくちゃ楽しい！　ねぇ、通して歌ってみよ？　ギター弾いてくれる？」


　二人で今できたばかりの曲を演奏する。歌詞がない部分は「ららら」と歌うだけだが、それでも通して歌えば一つの物語になっていた。一つの曲が生まれていた。


「何これ、なんかすっごく幸せだった。ジャンといると音楽がどんどん好きになる。ずっとジャンとこうしてたい」



　幸せの余韻に浸っていれば、ジャンが唇を撫でてきたから、チャコはジャンが満足するまで口を閉じて黙っていた。もうこの感触にも随分慣れてチャコは当たり前のように受け入れている。そして、指が離れていけば、ちゃんと気持ちはわかっているんだと伝えたくて、チャコはいつも同じ言葉を口にするのだ。


「私もジャンのギター大好きだよ」


　その言葉にジャンは満足そうに微笑むから、二人がちゃんと通じ合えているとわかる。ジャンの想いがわかることがチャコは嬉しくてたまらなかった。