あの日、桜のキミに恋をした

帰り道と分かれ道

Side 由奈


康介はとても過保護な彼氏だった。


付き合う前、何であんな時間にコンビニに来ていたのか聞かれたから、塾が終わってから寄っていたと話すと、「これからは迎えに行く!」と、塾の日はいつも迎えに来てくれるようになった。


「あ!康介っ!!」


「よ!おつかれ!」


康介はいつも塾の2、3軒隣の目立たない所にバイクを停めて待ってくれている。


前に一度、迎えに来てくれなくていいよと断ったことがある。


きっと友達との集まりをわざわざ抜けて来てくれているだろうから、それが申し訳なかったから。


でも康介は「ここらへん夜は暗いし、由奈に何かあったら困る!」と、まるでお父さんみたいなことを言った。


すっごく過保護だけど、私はそれが嬉しかったりする。


康介とは中学が違うから、こうして一緒に過ごせる時間はかなり貴重だった。


塾は家から歩いて30分くらいの隣駅にある。


行く時は電車で行っているけど、帰りは康介のバイクがあるから、押しながら一緒に歩いて帰るのが日課になっていた。


実は免許を持っていないから、私のことは絶対に乗せられないと言われてしまった。


ちょっとややこしいけど、康介は《《真面目》》な《《不良》》。


「そういえばアイツらがまた由奈に会いたいって」


「アイツらって、一哉くんと直樹くん?私も!またゆっくり話したい!」


「もう名前呼びかよ……。仲良くなってくれんのは嬉しいけど、なんか複雑だわ……」

 
康介はちょっと拗ねていた。


私の彼氏はヤキモチ妬きでもある。


見た目がヤンチャで、そんなこと気にしなさそうだからそのギャップがまたとても可愛くて。


でも康介にこんなことを言ったらもっと拗ねてしまうだろうから、これは私だけの秘密。


ちなみに、ぎゅっとハグするとだいたい機嫌が直る。


これも最近分かったことで、私の中で康介の取り扱い説明書が少しずつ更新されているのが嬉しかった。
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