あの日、桜のキミに恋をした
あれから——。


康介と別れてから、私は潤先輩にイジられていた通りの〝ボッチ〟になった。


私と康介が別れたという話は瞬く間に広がって、それと同時に私が3年の先輩に乗り替えたという噂が立った。


目立ったいじめこそなかったものの、みんな私とは関わろうとしなくなったし、きっと陰では色々言われていたと思う。


でも、下手に近くで詮索されて妊娠のことがバレたりするよりはよっぽどマシで、放っておかれる方が楽だった。


そして私はお母さんに頼んで、先輩のお母さんの助産院〝春の風助産院〟で産ませてもらうことになり、定期的に健診へ通っていた。


妊娠経過は順調に思えたのに、夏休みに入ってからそれは一転した。


時々生理痛のような痛みを感じていた私はしばらく病院に入院することになった。


切迫早産と言って、まだ出産の時期ではないのに、子宮が赤ちゃんを出す準備を始めてしまっていたのだ。


下腹部痛だけでなく、子宮頸管という部分が少し短くなっていたため、薬でそれを抑えることになった。


ちょうど夏休み中だったから良かったものの、退院しても絶対安静は免れないと先生から説明があった。


お腹も目立ってきて、さすがにもう隠すことも難しくなってきたし、学校にいる間に何かあっても周りに迷惑がかかってしまう。


家族で話し合った結果、私は学校を辞めて家も引っ越すことになった。


せめて美月には別れを伝えたかったけれど、本当のことを言うわけにもいかず、かと言って嘘もつきたくなくて、結局誰にも何も言わないまま私はいなくなった。
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