あの日、桜のキミに恋をした
「あれ?お母さんも一緒に食べて行かないの?」


私がお茶碗にご飯をよそっていると、お母さんは身支度を始めていた。


「せっかくだけど、私ばっかり由奈や春くんに会ってるとお父さん拗ねるから。今日は帰るわね」


なるほど。


お母さんも色々気を遣うことがあるらしい。


私は春斗とお母さんを見送った。


最後の最後まで出産に反対していたお父さんだけど、いざ春斗が産まれると誰よりもメロメロで可愛がってくれている。


有難い限りだった。


少し寂しいけれど、春斗と2人でテーブルを囲み、いただきますと声を揃えてお母さんが作ってくれたハンバーグをいただいた。


「おばあちゃんのハンバーグ美味しいでしょ?」


「うんおいしい!おばあちゃんのごはんはぜんぶおいしい!」


こんなの聞いたら泣いて喜ぶだろうなと思って、ハンバーグを頬張る春斗の写真と共にお母さんにメッセージを送った。


ちょうどアプリを開いていたタイミングで、彼からメッセージがきていた。


『これ今度行く店!楽しみにしてて!』


それは今度2人で行くことになっているディナーのお店のURLだった。


春斗はお母さんたちの家に泊まることになっている。


共通の友人の紹介で知り合った彼とはもう1年以上付き合っている。


私より3つ年上で、IT系の企業に勤めている人だ。


春斗のことも可愛がってくれていて、3人で出かけることも多い。


可愛い息子に、愛する人。


大切な人たちに囲まれて……うん、私は十分すぎるくらい幸せだ——。 
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