あの日、桜のキミに恋をした
「橘さん久しぶり!」


俺は会場で橘さんを見つけ、グラスを持って彼女に話しかけた。


「ウソ佐々木くん!?久しぶり!」


「俺ら由奈が学校辞めてからあんま話さなくなったし、ほんと久しぶりだよな。まだ由奈と連絡とか取ってんの?」


「そうだね。いや……連絡先変わったみたいで音信不通だよ?」


思い出話の延長で自然に由奈のことを聞き出そうとしたつもりが、思いっきり直球の質問になってしまった。


多分、橘さんも困っている。


「そっか……なんかみんなの顔見てたらさ、そういえばどうしてんだろうって気になったんだよ。ほら、俺ら別れたけど別にもうそういうのは時効かなーと思って」


不審に思われないようにそれっぽい理由を並べてみた。 


彼女の連絡先を知ったところで、自分がどうするのかは分からない。


どうしたいのかも分からない。


でも、彼女が今どこで何をしているのか気にならないと言えば嘘になる。


俺はまだあの頃に未練があるのかもしれない……。


「……私も久しぶりに連絡とりたいし、知ってそうな人にあたってみるね?」


「マジ?別に急ぎとかじゃないから、もし分かったら俺にも教えて!」


止まっていた俺の初恋が再び動き出す音がした——。
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