あの日、桜のキミに恋をした
他愛もない話をしていればあっという間に私の家の前に着いてしまう。


もっと一緒にいたくて、毎回バイバイするのが寂しい私は、なんとか会話を引き伸ばそうといつも必死だった。


「……バ、バイクってさ、乗って帰らないの?」


「ここでこんなの鳴らしたらさすがにまずいじゃん?だから大通りまで出てから乗る」

 
ご近所のことを気にしてくれるんだから、やっぱり康介は〝いい不良〟だった。


「じゃあ、そこまで送っていく!」


「バーカ。そしたらまた由奈を送りに来なきゃいけないだろ?」


確かに、それではいつまでも康介が家に帰れない。


でもやっぱり離れるのは寂しくて……。


「また明日も迎え行くから。な?」


私の気持ちを察してくれたのか、康介が優しく頭を撫でてくれた。


私はコレが大好きだった。


彼が来た道を戻って行くのを確認して、私は急いで家の中に入り2階まで駆け上がって自分の部屋の窓を開ける。


「康介ー!おやすみーー!」


小声で叫ぶと、康介が振り返って手を振ってくれる。


私は彼が見えなくなるまでずっと窓の外を見続けた。
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