あの日、桜のキミに恋をした
床に転がされて、3〜4人くらいが私を囲む。


これから一体どうなってしまうのかは、なんとなくだけど想像がついてしまった。

 
「中学生のくせに、可愛い下着つけてんじゃん。アイツとヤリまくりな感じ?」


Yシャツのボタンを外されて、キャミソールを(まく)りながら主犯格の男が言った。


口を塞がれているからどうせ声は出せないし、手足も縛られている。


こういうのは怖がっているところを見せたら負けだと思って、私はじっと男たちを睨み続けた。


「ほんと強いね。そういうコ嫌いじゃないよ?でもそうしていられるのも今のうちだよ。今度は体に直接聞いてみようかな」

 
スカートの中に手が入ってきて、いよいよまずいと思った私は、足を激しく動かして抵抗を始めた。


けれど相手は1人じゃなかったから、そんなのすぐに押さえこまれてしまう。


——あぁ最悪だ。
こんなところで、こんな人たちに……。


もう康介に合わせる顔がないと絶望したその時だった。


「由奈ッ!!!」


んーんん(こーすけ)ッ!!」


外から康介がトイレの中に入ってきた。


私の方を見た彼は悲しそうに顔を歪めた後、目にも留まらぬ速さで犯人たちに殴りかかる。


康介が相手に馬乗りになって殴り続ける音と、血が飛び散る音だけが静かな夜の公園に響き渡る。


康介は完全に我を失っていた。


「ダメ!これ以上は死んじゃう!康介が捕まっちゃう!」


私は康介の後ろから彼を止めに入った。


もう十分だ。


相手はとっくに抵抗しなくなってぐったりしている。


「大丈夫、私は大丈夫だから……!」


私はそう言い聞かせながら血だらけの康介の手を包み込んだ。
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