あの日、桜のキミに恋をした
「あーーカッコ悪い!やっぱ今のナシな!」


彼はそう言って平気なフリをしたけれど、きっと春斗から話を聞いてから今日までの間、ずっと気になって、でも聞けなくて。


たくさん悩んで、我慢をしてくれていたはずだ。


それがどうしようもなく愛おしくて、この人を大事にしたい、この人と幸せになりたいと改めて強く思った。


私は先輩の方に体を向けて彼を抱きしめた。


「何でですか?せっかくドキッとしたのに!!先輩もヤキモチとか妬いてくれるんですね」


私自身がなんだか嬉しくて、顔が見えないのをいいことにニヤニヤしながらからかうように言った。


すると彼は私の肩を掴んで引き剥がし、やや不満げな顔でこう言った。


「てか、いい加減その先輩呼びも敬語も卒業!」


「え〜?じゃあ……潤、さん……とか?」


彼はさっきの私のように目をパチパチさせた後、ため息をつきながら頭を抱えるように自分の額に手を添えた。


「マジなんなんだよ。反則だろ……」


「言わせた本人が照れないでくださいよ!」  


主導権を握れたようで上機嫌の私は彼の頬をツンツンと突いた。


「覚えてろよ……?今日は朝まで寝かすつもりねーから!」


「私も同じこと考えてました……」


彼の顔の輪郭を確認するように手を這わせ、私の方から口付ける。


今晩春斗はお母さんたちのところに泊まっているから、家には私と先輩の2人きり。


ここ最近あまりにも色んなことが起こりすぎて、ちょっと疲れてしまった。


今日はもう何も考えず、ただ快楽に溺れたい。


ココロもカラダも、先輩(あなた)で満たして欲しい。


この時の私は、そんな図々しいことを考えていた——。
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