あの日、桜のキミに恋をした
それからほどなくして、何人か警察官がやって来た。


私と康介も事情聴取のために警察署に連れて行かれる。


「「由奈!!!」」


取調室にお父さんとお母さん、そして康介のお兄さんが入ってきた。


「お父さん!お母さん!」



お母さんが駆け寄ってきて私を心配しながら声をかけてくれたけれど、私はそんなことよりも康介の方に向かったお父さんが心配だった。


多分、というか絶対に、康介のことを誤解するに違いなかったから。


「……君は?」


「佐々木康介です……由奈さんとお付き合いさせてもらってます」


康介はあくまで冷静にお父さんに頭を下げた。


私はお母さんの手を振り払ってお父さんに駆け寄る。


「お父さんあのね、康介が助けに来てくれたの。じゃなかったら私……」



——今頃あの人たちに酷いことされてたよ?



そう言いたかったけど、その言葉は言えなかった。


「……そうか。娘を助けてくれてありがとう」


「いえ……俺がもっと早く来ていれば……」


「だが、もう金輪際うちの娘には関わらないでくれ」


お父さんはそう言い放った後、康介のお兄さんに頭を下げてスタスタと行ってしまった。


「ちょっと待ってよお父さん!」


「……行くわよ由奈」


お母さんに引っ張られた私は足がもつれそうになりながら、康介とお兄さんの横を通る。


すれ違い際に康介と目が合ったけど、私たちは何も話せないまま引き離されるように警察署を後にした。
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