あの日、桜のキミに恋をした

another STORY feat.沢村

Side 沢村


あれは確か、大学2年か3年の春。


高3の時のクラスの何人かで集まった日だったと思う。


「んじゃあぁ、2次会行く人〜?」

「はーーい!」

「行く行くー!」


ほとんどのメンバーが次の店に向かって列を成して歩き始めている中、橘だけはスマホを見たまま店の前で立ち止まっていた。


「橘は2次会行かねーの?」


「うーん……いっかな!わりと酔ってるし!」


ありきたりな言い訳だった。


見え透いたウソなんてやめとけって。


康介が来てないから帰るんだろ?


アイツがいたら、そんな作り笑いなんてしないじゃん。


知ってるっつーの!


俺は、康介(アイツ)を見ていた橘をずっと見てきたんだから。


彼女はずっと、俺の親友のことが好きだった。


叶うはずのない恋なのに。


そして俺はずっと、そんな彼女のことが好きだった。


敵うはずもない恋なのに。


俺たちは報われない者同士だった。
< 144 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop