あの日、桜のキミに恋をした
「じゃあ駅まで送ってくよ」


「えぇ〜どうしちゃったの!なんか超紳士じゃーん」


「これくらい普通だろ」


「わかったぁ!これがいつもの手口なんでしょぉ?酔った女の子に優しくして、エッチなことしてるんでしょぉ〜?」


「してねーーから!」


こうやってすぐ茶化されて、イジられて。


俺の気持ちなんて伝わった試しがない。


ほんと、ふざけんなって。


——どこがわりとだよ、かなり酔ってんじゃねーか!


橘は意外と酒に弱かったらしい。


また1つ彼女のことを知れた。


「俺、何とも思ってない女子にはこんなことしねーから」


「何それ〜。もしかして、誘ってる?」


こっちは本気(マジ)なのに、橘はただ酔った勢いと同窓会のノリだけで言ってるのが分かるから悔しかった。


俺はただのワンナイト要員。


でも、少なくとも俺は橘の中で〝セックスしてやってもいい男〟というカテゴリーの中には入れていたんだと、ちょっと喜んでる自分がいて。


俺は本当にバカで可愛いやつだ。


まだ大学生ではあったけど、大人になるってすげーと思った。


橘とラブホに来る未来があるなんて、あの頃の俺は想像すらできなかった。


こんなことも叶うんだ。
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