あの日、桜のキミに恋をした



「そういえば沢村ってさ、高校の時私のこと好きだったりした……?」


朝方一緒にホテルを出て、静まり返った繁華街を2人で歩きながら、ふいに橘が聞いてきた。


それは本当に単なる好奇心からの質問で、真実を求めているわけではないと分かっていた。


「そんなこともあったなぁ……懐かしいわ」


俺のこのひと言が良かったのか悪かったのか、その日から橘とは定期的に会ってセックスするようになり、そのうち飲みに行ったり遊びに行ったりもするようになった。


こうして、万年友達フラグが立っていた俺は、晴れて橘のセフレ的ポジションになれたわけだ。


これが昇格なのか降格なのかは今はまだわからない。


そして先日、酔った橘が俺に話した。


自分は今康介と付き合っているんだと匂わせて、阿部さんを牽制してしまったと。


俺にはそれが懺悔(ざんげ)のようにも聞こえたから、それをいいことに、つい阿部さんに告げ口してしまったのだった——。
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