あの日、桜のキミに恋をした
Side 康介
電話の途中で急に由奈が何も言わなくなった上に、電話の向こうから男の声が聞こえてきたから嫌な予感がしたのだ。
俺は耳に携帯を当てたまま家を飛び出した。
時間的に考えて、由奈の家の近くのあの公園辺りにいることは分かっていた。
暗い公園の中で唯一光が漏れている公衆トイレが見えた瞬間、ここだと確信して飛び込む。
「由奈ッ!!!」
「んーんんッ!!」
由奈は口にガムテープを貼られ、手足を縛られた状態で汚い床に倒れていた。
Yシャツのボタンが外されて、中の下着が露わになっているのを見て、俺の中で何かがプツンと切れた音がした。
完全に血が昇っていた俺は、トイレの外に男を引っ張り出して馬乗りになって殴り続けた。
「ダメ!これ以上は死んじゃう!康介が捕まっちゃう!」
由奈に後ろから抱きしめられてようやく俺は我に返る。
俺の下には顔面血だらけの男がぐったりとしていた。
かろうじて息はしている。
——もし由奈が止めてくれなかったら、俺は多分コイツを殺してしまっていた。
自分の拳にべっとりついた血を見てそう思った。
そんな汚れた俺の手を、彼女の白くて綺麗な手が包み込む。
俺は自分が着ていたパーカーを由奈にかけて抱きしめた。
怖い思いをさせたことに変わりはないけど、無事で本当によかった。
何から言えばいいのか分からなくて、俺は無言で彼女を抱きしめ続けた。
電話の途中で急に由奈が何も言わなくなった上に、電話の向こうから男の声が聞こえてきたから嫌な予感がしたのだ。
俺は耳に携帯を当てたまま家を飛び出した。
時間的に考えて、由奈の家の近くのあの公園辺りにいることは分かっていた。
暗い公園の中で唯一光が漏れている公衆トイレが見えた瞬間、ここだと確信して飛び込む。
「由奈ッ!!!」
「んーんんッ!!」
由奈は口にガムテープを貼られ、手足を縛られた状態で汚い床に倒れていた。
Yシャツのボタンが外されて、中の下着が露わになっているのを見て、俺の中で何かがプツンと切れた音がした。
完全に血が昇っていた俺は、トイレの外に男を引っ張り出して馬乗りになって殴り続けた。
「ダメ!これ以上は死んじゃう!康介が捕まっちゃう!」
由奈に後ろから抱きしめられてようやく俺は我に返る。
俺の下には顔面血だらけの男がぐったりとしていた。
かろうじて息はしている。
——もし由奈が止めてくれなかったら、俺は多分コイツを殺してしまっていた。
自分の拳にべっとりついた血を見てそう思った。
そんな汚れた俺の手を、彼女の白くて綺麗な手が包み込む。
俺は自分が着ていたパーカーを由奈にかけて抱きしめた。
怖い思いをさせたことに変わりはないけど、無事で本当によかった。
何から言えばいいのか分からなくて、俺は無言で彼女を抱きしめ続けた。