あの日、桜のキミに恋をした

 

あの後俺はそのまま由奈の家に上がらせてもらい、お昼を食べ、夜を食べ、風呂にも入った。


俺たちが別れてからの出来事や昔の思い出話を1日中話していた。


由奈はソファであぐらをかいている俺の上に座って、今は2人で彼女のスマホに入っている春斗の写真を見ている。


「春斗が帰って来たら色々話さなきゃだね!」


「絶対驚くよな……嫌だって言われたらどうしよう……」


「確かにビックリするとは思うし、最初は混乱もするかもしれないけど……でも、最後はちゃんと分かってくれるし、それに喜ぶと思う」


息子の反応にビビっている俺とは反対に、由奈は自信ありげに言った。


母親の勘的なものなんだろうか。


「実家にね、お母さんが作った春斗のアルバムあるから今度持ってくるね」


「その時は俺も行くよ。ちゃんと挨拶しなきゃだし」


由奈にこんなに苦労をかけたんだから、あの頃せっかく得られた俺の信用もきっと失っているだろうけど。


でもそれはまた認めてもらえるまで頑張るしかない。


「ね!康介の話も聞かせてよ〜!」


由奈が期待の眼差しで俺の方を見て来た。


そんな大した話はないんだけどな。
  

「もちろん話すけど……続きは向こうでゆっくりな」


俺はそのまま由奈のことを抱え上げて寝室に向かう。


俺たちは会えなかった8年間を埋めるように、ひと晩中くっついて抱き合った。


こうして俺たちの初恋は10年の時を経て、再び花を咲かせたのだった——。
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