あの日、桜のキミに恋をした
お祭りは子供から老人までたくさんの人で賑わっていた。


仮に康介が来ていたとしても、気が付かないと思う。


そんな状況で、私に声をかけてきた人がいた。


「あれ?由奈ちゃん?」


「……一哉くん?」


振り返ると、そこには康介がいつも一緒にいた友達の1人、一哉くんがいた。


彼は何人か友達と来ていたけれど、その中に康介の姿はなかった。


「久しぶりだね。元気だった?」


「うんぼちぼちかな!もう毎日勉強で飽きちゃって……」


「すげーなー由奈ちゃんは」


一哉くんは金髪でピアスを開けていて、一見ちょっと怖そうに見えるけど、実はすごく気さくで優しい。


彼ならきっと康介の様子を知っているだろうと思い、私は思い切って聞いてみた。


「……康介って元気にしてる?」


「あれ、連絡とってない?」


「たまに、かな。なんか忙しそうで……新しい彼女でもできたのかな〜?なんて」


自分で言いながらなんだか泣きそうになってしまった。


一哉くんにバレないように、あくまで気にしていない雰囲気を醸し出す。


一哉くんは私のことを見ながらしばらく考え込んだ後、何か思いついたように言った。


「……由奈ちゃんちょっと祭り抜けない?」


「え……いいけど……?」


私は美月に声をかけ、みんなにも先に帰ることを伝えてもらった。
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