あの日、桜のキミに恋をした
一哉くんに連れて来られたのは駅前にある区立図書館だった。


ここは図書館以外にカフェや会議室、自習室があって、私も塾に通い出す前は何度か利用したことがあった。


今日はお祭りだからか、利用している人はあまりいない。


一哉くんにシーっとされて、彼が指差す方を見ると、そこには机に向かっている康介がいた。


何でこんなところに……?


「アイツずっとあんな感じでさ、俺らも全然遊んでねーの。今日も祭り誘ったのに断られたんだよね」


忙しそうにしていたのは、彼女と会っていたわけでも、遊んでいたわけでもなく、ずっと勉強していたからなんだと教えてくれた。


「俺の口からはあんま言えないけどさ、アイツすげー頑張ってんだよ。由奈ちゃんと一緒にいたいからだと思う。だからさ、アイツのダチとしては、待っててくれると嬉しいなーって」


お父さんがあの時警察署で彼にあんなことを言ったから、てっきり面倒くさい女だと飽きられちゃったんだと思っていた。


ひと言言ってくれれば良かったのに。


不器用すぎるヒーローに思わず笑ってしまう。


「一哉くん、近々康介と会う約束ある?」


「この後祭りの差し入れするよ。なんか伝えようか?」


「私も頑張る。絶対待ってるって伝えてほしい!」


「りょーかい!」


私たちは指切りして、一哉くんがここに連れてきてくれたことは内緒にする約束した。
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