あの日、桜のキミに恋をした
ついこの間までセミが鳴いていたと思ったのに、今度はいつの間にかマフラーが必須の季節になっているから驚いた。


そしてこの時、いい加減痺れを切らした一哉が怒りを爆発させる。


「お前さ、勉強大変なのは分かるけど、少しは由奈ちゃんのこと考えろよ!最後にメール返信したのいつだったか言えるか?電話したのは?」


俺は携帯の受信ボックスを確認した。


由奈と最後にメールをしたのは……10月末!?


しかも俺が返信をしていないから止まっていた。


「やばい……どうしよう。返信したと思っ
てた……」


由奈の「待ってる」という言葉にすっかり甘えてしまっていた。


携帯を見ながら震える俺に、一哉がいいことを教えてくれる。


「ちなみに今日、クリスマスイヴだぞ」


12月24日。


世のカップルたちは、きっと聖夜ならぬ性夜を過ごしてイチャイチャするんだ。


それに比べれば、少し彼女に会って話すくらい可愛いものだ。


きっとイエス様も目をつぶってくれる。


〈今日ちょっと話せる?大丈夫なら由奈の家の前行く〉


早速由奈にメールを送ったけど返事がない。


学校はもう冬休みのはずだから、そうなると塾かもしれない。


俺は考えなしにとにかく由奈の家に向かった。


まだ17:30なのに辺りはすっかり暗くなっていた。


2階のこちら側に面した部屋が由奈の部屋だ。電気は付いているから家にはいるらしい。


——やっぱ怒ってんのかな……


メールの受信ボックスは0件のままだった。


さすがに家にピンポンするのはヤバすぎるか?


平日だから親父さんはいないだろうけど、お母さんが出て来ても気まずい。


「あら、あなた……」


「こっ、こんばんは!佐々木康介です」


グダグダ考えていると、買い物帰りの女性が帰ってきた。


警察署で見た由奈のお母さんだ。
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