あの日、桜のキミに恋をした
——今日もいた……!

 

夜21:00、私は今日も塾の帰りに家の近くのコンビニに寄った。


店の前に座り込んでいる男の子の集団。


私はその中の1人に、一方的に好意を寄せている。


初めて彼を見たのは1ヶ月前くらい。


春休みから塾に通い始めた私は、甘いものを買うために帰りによくこのコンビニに寄るようになった。


そこのコンビニは、金髪でピアスをしたいかにもチャラそうな制服姿の男の子たちのたまり場になっていて。


彼らがこの辺りではわりと有名な不良グループの中学生だということはすぐにわかった。


店に入る時と出る時はなるべく彼らを見ないよう早歩きをしていたけれど、その中に1人、目を引かれた人がいた。


彼は少し長めの黒髪を下ろして、耳にはシルバーのピアス。


輪の中心で友達と楽しそうに話していた。


そのくしゃっと笑う顔を見た瞬間、ドキッとしてしまったのだ。


その彼と、私は一瞬目が合ったことがある。


私は慌てて目を逸らしたけど、それからもなぜか彼のことが頭から離れなかった。



——彼女とかいる……よね。



年上の彼女と、あんなことやこんなこと、色々大人なことを経験してそうだ。


もちろん、私なんか相手にされないことは分かっていた。


でも、気づいたら頭の中ではいつも彼のことを考えていて。


それだけで、心が弾んで、変わり映えしなかった私の生活が一気に色づいた気がした。


これが恋だということは、教えてもらわなくても分かっていた。


そして、私はその人に会うために、塾のない日もわざわざコンビニに通うようになった。
< 3 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop