あの日、桜のキミに恋をした
「広瀬さん、絶対康介のこと好きだよ……」


「えー?それはないっしょ。だって由奈と付き合ってるって多分知ってるし」


「だったら尚更だよ!康介がそんなんだから、彼女もイケるかもって思ってグイグイくるんじゃん!!」


つい感情的になって早口で捲し立ててしまった。


康介は腑に落ちない顔をしている。


何でそんなことを言われなきゃいけないんだと顔に書いてあった。


「それを言うなら由奈の方だろ?」


「どういう意味?」


「由奈こそ、毎日色んな男と楽しそうに話して、彼氏いる奴の行動とは思えないけど?でも俺はそれをひろーい心で黙って見守ってやってたんだよ?だから由奈にそんなこと言われる筋合いねーわ」
 

売り言葉に買い言葉。


お互い、これまでの小さな我慢が一気に噴き出して、言い争いは収まるどころか激しさを増した。


「もう知らないッ!どーぞ足速い者同士勝手にイチャイチャすればいいよ!」


「そっちこそ、せいぜい逆ハーレムを楽しめば?」


次の日の朝、康介から『朝練あるから先行く』というメッセージが届いていて、それから体育祭まで私たちが一緒に登校することはなかった。


多分これが、私たちの初めての喧嘩だった。
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