あの日、桜のキミに恋をした
「佐々木くん、リレー頑張ろうね!」


「あぁ、うん……」


リレーの前、広瀬さんが何か話しかけに来てたけど、俺はそれどころじゃなかった。


さっきから後ろの方で由奈が多分隣のクラスの(やつ)と楽しそうに話しているのが気になって仕方ない。


——彼氏そっちのけでそんなに盛り上がることなんてあるか!? え、いまハイタッチした!?


由奈は広瀬さんに嫉妬してたみたいだけど、結局最後までヤキモキさせられてるのは俺の方だった。


気が散ってリレーなんて走れないかと思ったけど、早く終わらせてクラスの席に戻りたい一心で、逆に集中することができた。


俺はトップでバトンを繋ぐ。


が、結果は3年に次ぐ2位だった。


でも俺にとってはそんなことはどうでも良かった。


足早にクラスの席へ戻ると、由奈はまだアイツと話している。


俺のリレーなんてどうせ見てなかったんだろうな……。


次は由奈が出場する二人三脚の障害物競争だ。


この2つは普通バラバラの種目のことが多いのに、なぜかうちの学校は合体している。


パァーンというピストルの音で一斉に走り出す。


由奈たちの滑り出しは順調だった。


2人の息も合っていて、このままゴールテープを切れると思われたが、ここでペアの子が大きくバランスを崩した。


それに引っ張られた由奈も地面に倒れ込む。


ここからじゃ距離があって怪我の具合とかは見えないが、2人はなんとか体を起こして体勢を整え、再びレースに戻る。


とりあえず2人は最下位にはならずにゴールした。


その瞬間俺は席を立ち上がって由奈の元へ走り出していた。
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