あの日、桜のキミに恋をした
Side 由奈


「ねぇねぇ由奈！初Hってさ、やっぱり痛いもん？」


「えぇっ!?どうしたの急に……!?」


夏休み前最後の登校日でクラス全体が浮き足立っている最中《さなか》、まるで「次の授業なんだっけ？」みたいなノリで美月から予想外の質問が飛んできた。


それを聞きつけて、同じグールプの子も私の周りに寄ってくる。


「だってぇ〜！そういうの経験してるのうちらの中だと由奈だけじゃん？佐々木くんとヤリ放題なんでしょ？」


「実は私も気になってたんだよね！」


——ヤリ放題って……。


もう少しオブラートに包もうよと心の中でツッコミを入れた。


男子の前ではそんな素振りは見せないけど、女子は意外とこういう話題が大好きだ。


私はチラッと康介の方を見た。


彼も友達に囲まれて何か楽しそうに話している。

　
「ま、まぁ、最初はちょっと痛かったけど…。それ以上に、嬉しさとかそういう気持ちが大きかった……かな」


「うわ〜！経験者は語る、だね！」


「なんか大人って感じ！」


つい何かの少女漫画でヒロインが言ってそうなありきたりな言葉を並べてしまった。


でも私にそんな羨望の眼差しを向けられたって困る。


だって、私と康介は、まだ一度もそういうことをしたことがないんだから……。


やっぱり好きな人とならそういうこともしたいって私は思っているけど、康介は全然そういう素振りを見せない。


私がHなことを考えすぎなのかもしれないし、引かれるのが怖くて自分からアクションを起こせないでいた。
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