あの日、桜のキミに恋をした
ここら辺で見たことのある制服だったから、俺と同じ中学生なのはすぐにわかった。


それにしても、まだ21:00とはいえ女子が一人で出歩くのは危ないと思う。


そんなことを思いながら、俺は彼女が店に入って行くのを目で追いかけていた。


セミロングの黒髪は、毛先がクルッとなっている。


元々くせ毛なのか、それとも自分でやっているのかは男の俺にはよく分からない。


目鼻立ちがハッキリしていて、お世辞抜きにどっかのアイドルなんじゃないかと思った。


俺がガン見していたせいか、こっちを向いた彼女と一瞬目が合う。


でも彼女はすぐに目を逸らしたからきっと時間は1秒にもならなかった。



——そりゃそうだよな。



どう考えても俺たちみたいな奴とは住む世界が違うコだ。


頭ではそう分かっているのに、それ以来俺は彼女のことしか考えられなくなった。


名前はなんていうんだろう。


彼氏とかいんのかな?


あんな可愛けりゃいるに決まってるか。


きっと相手も真面目で勉強ができて、育ちのいい男なんだろう。


基本いつも一緒にいるのは男ばかりで、俺にそんな色恋沙汰はない。


俺らみたいな男が好きな女子はたまに寄ってくるけど、その中に好きになれるコはいない。


でもこう見えて、俺は中2の時に童貞は卒業してる。


相手は1コ上の先輩。


別に好きだったとかそういうんじゃなく、ただ先輩に誘われたからノリでヤッただけ。


まぁ確かに気持ちよかったけど、何も思っていない女とそんな時間を過ごすくらいなら、俺はダチとバイクに乗ってる方が良かった。


今どきネットにはアダルトな動画とか画像が溢れているから、俺にはそれで十分だった。
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