あの日、桜のキミに恋をした
Side 康介


頭を冷やしたい、なんてカッコつけたことを言ったけど、結局のところ俺はただ拗ねているだけだった。


文化祭を案内するくらいには仲のいい男友達がいたことも、俺に相談なくソイツを優先されたことも。


どれも大したことないものばかり。


——めんどくせェ男だな、俺……。


あの日、教室の扉を開けた時に立っていた男が彼女の言う〝小林くん〟だということはすぐに分かった。


成績優秀で、真面目そうな、俺とは正反対のタイプ。


勝手にメガネをかけた陰キャそうな顔かと思ってたのに、普通にイケメンだったからそれもなんか悔しかった。


由奈は何で俺なんかと付き合ってるんだろう。


普通に、もっと良い奴がいるはずなのに。


髪を切って、高校に入ったくらいで自分が変われたつもりになっていたのではないかと不安になった。


結局、中身は何も成長できていないんじゃないかとどんどん自信がなくなっていく。


自分でもよく分からない心の内を人に説明するのが難しくて、あれからずっと由奈とは話せていない。


俺が行っても気まずいだけだから、朝家まで迎えに行くのもやめた。


ただとりあえず駅の改札で彼女が来ることだけは確認している。


なぜそんなことをしてるのか多分不思議に思われてるはずだ。


やっぱ俺は由奈のこと大好きなのだ。


理由はシンプルに、ただそれだけ。
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