あの日、桜のキミに恋をした
さっきまでとは全く違う声色に俺は耳を疑った。


本当に同じ人間なのか?


さすがに聞き捨てならない内容で、俺は後ろを振り返って反応した。


「・・・ハァ?」


「中学の時ヤバかったんだよ。ガラの悪そうな長髪と付き合い始めてから、そいつの取り巻の奴らにも手出して、全員に腰振ってたクソビッチだから!」


小林は、残念だったねとでも言いたげに俺の肩に手を置いてきたから、俺はその手を払って小林の制服の胸ぐらを掴んで引き寄せた。


「……オマエ、由奈のこと好きだったんだろ?自分が選ばれなかったからって、好きな女を逆恨みするとか、どーゆー脳みそしてんだよ」


唇を強く噛んで怒りに顔を歪めて俺のことを睨んでくる。


図星か——。


離せよと俺の手を叩いて暴れるから、俺は投げ捨てるように掴んでいた服を離した。


小林は尻もちをついたまま、少し怯みながら制服を整えている。


こんな胸糞悪いのは久々だった。


彼女や友達を好き放題言われて、さすがの俺もカチーンときた。


もう高校を退学になろうと悔いはない。


コイツはここで殴っておかないとダメだ。


「とりあえず、由奈のことを(けな)した分。それから俺のダチを侮辱した分。2発で勘弁しといてやるから。歯ァ食いしばれ?」


座り込む小林と目線が合うようにしゃがみ込んで殴ろうとした時、遠くから俺の名前を呼ぶ叫び声が聞こえてきた。
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