あの日、桜のキミに恋をした
バッチーーーーーーン


それは気持ち良いくらいに見事な音だった。


由奈が小林の頬を思いっきり叩いたのだ。


叩かれたアイツの頬は真っ赤になっている。


てっきり小林を心配して、座り込んでいるアイツに手を差し伸べるのかと思っていたが、俺の心配は杞憂だった。


それよりも、目の前で起こった衝撃的な出来事に口がポカーンと開いてしまう。


「これは康介と、彼の友達を悪く言った分!もう金輪際私たちに関わらないでね!」


ニコニコしながら満足そうに両手をパンパンと払った由奈は、最後にそんな決め台詞を残して歩いて行った。


小林は地面に座ったまま呆然としていた。


それも無理はない。


だって由奈にこんな一面があるなんて俺も今日初めて知った。


俺が〝ガラの悪そうな長髪〟本人だってことも、コイツにとっては驚きだったに違いない。


つくづく憐れで残念な奴だ。


俺は特に何も声をかけず、慌てて彼女の後を追いかけた。
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