あの日、桜のキミに恋をした
「俺には殴んなって言ったくせに、由奈が殴ったのは納得いかねェ」


約束通り彼女をカフェに連れて来て、目当てのドリンクを買った。


彼女は俺の前に座って幸せそうにストローを吸っている。


「あれは殴ったんじゃなくて叩いたの!そこ間違えないで?」


あの威力は明らかに叩くというレベルを超えていた。


でも今の由奈にこんなことを言えば「康介も叩かれたいの?」と詰められそうだからやめておく。


「……けど、あんな風に怒ってくれて嬉しかったワ。サンキュー」


手を伸ばして由奈の頭を撫でると、飼い主に触られた動物のように嬉しそうな顔で笑っていた。


俺たちは喧嘩していたことなんてすっかり忘れ、こうして放課後にカフェでデートするごく普通のカップルに戻ることができた。
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