あの日、桜のキミに恋をした
朝学校に着いて自分の席に向かうと、沢村が神妙な顔つきでおはようと声をかけてきた。


「一生のお願いがあるんだ……」なんて言うもんだから、これはかなり大事な話なんだろうと思って俺は一旦手を止めて沢村に向き合った。


「なんかあったのか?」


「……なぁ頼む!今年のクリスマス、康介と俺と阿部さんと橘さんの4人でクリパやらせてくれッ!」


「はぁ!?なんでまた急に……」


由奈は橘さんと仲がいいし、俺は沢村と一緒にいるから4人は顔を合わせれば話はするけど、別に学校にいる間この4人で過ごすほどの仲ではない。


なのになぜこの4人でクリパなのか……?


「橘さんとゆっくり話せるきっかけが欲しいんだ!頼む手伝ってくれ!どうかこの通りッ!」


沢村は土下座までしてきた。


周りの奴はそれを見て何事かと笑っている。


まるで俺が土下座をさせてるみたいに見えるから、いい迷惑だ。


すぐに沢村を椅子に座らせ話を聞いた。


「もしかして、お前橘さんのこと……」
 

俺が全てを言い終える前に沢村はソワソワしながら首を縦に動かした。


なんと、コイツは橘さんに片想いしているらしい。


「マジか……!」


俺の親友と由奈の親友がくっつけば、ダブルデートだってできるかもしれない。


俺としても親友の恋は応援したいところだけど、元々由奈と予定を立ててしまっていたから、俺だけで今すぐにうんとは言えなかった。


「んーわかった!とりあえず由奈に聞いてみるわ」


「マジでありがとう!俺一生お前を大事にするわ!」


この後俺は、抱きついてきた沢村を引き剥がすのに苦労した。
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