あの日、桜のキミに恋をした
Side 由奈


後片付けを終えて、私たちは解散した。


美月と沢村くんは電車で帰るから駅の方へ、私はいつものように康介が家まで送ってくれている。


「4人でどんな感じになんのかドキドキしてたけど俺的に超楽しかった!沢村も嬉しそうだったし。橘さんに声かけてくれてありがとな!」


「うん……そうだね……」


クリパはとても楽しかった、楽しかったんだけど……。


最後食器を洗いながら康介と美月が楽しそうに何を話していたのか気になって、私の心にはモヤがかかっていた。


「……由奈?どした?」


歩きながら康介が私の髪を耳にかけて、心配そうにこっちを見てきた。


これまでの私ならきっと、なんでもなくなんてないのに、「なんでもない」と言って勝手に拗ねて落ち込んで、機嫌が悪くなって、康介と口喧嘩になっていたと思う。


でもこうしてほぼ毎日康介と過ごす中で、私も少しずつ学んでいた。


こういう時はきちんと言葉にしようと決めたのだ。


「……最後さ、美月とすごく楽しそうに何話してたのかな〜って……」


「ん?あーあれか!あれは、由奈の母さんのご飯が美味いって話と、俺と由奈がラブラブって話と、あと、親友として、沢村のちょっとした営業を……それだけ!」


康介は指折り数えて思い出しながら教えてくれた。


何か美月と彼に共通の話題があって、その話で盛り上がってるのかなとか、今度遊びに行こうよって約束してるのかなとか、あれこれ考えていたのに、どれも全然違った。


むしろほとんどが私にまつわる話でホッとした。


「もしかして、妬いてくれた?」


康介はとても嬉しそうだった。


私は「違うよッ!」と見え透いた嘘をつき、彼と繋いでいた手を離して早歩きした。


「待てって!」
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