あの日、桜のキミに恋をした

「康介の右手も出して！」


今度は私が作った指輪を彼の右手の薬指にはめる。


康介は手をグーパーさせて指輪を眺めていた。


「いつか絶対、私の旦那さんになってね！」


私が小指を差し出すと彼は「もちろん」と言って自分の小指を絡めてくれる。


私たちはしばらくそのまま小指を結んだままでいた。


〝絶対〟とか〝ずっと〟とか、そういう言葉をこの頃の私たちは何の疑問も持たずに使っていた。


それくらい、自分たちが思い描いた未来を信じて疑わなかったし、当然そうなるものだと思っていた。


若くて純粋で、今思えばとても微笑ましい。


しかしこの数ヶ月後、これがいかに浅はかな考えだったか、そしてこんな口約束が何の意味も持たないことを私たちは身をもって体感することになる——。