あの日、桜のキミに恋をした
Side 由奈


バレンタインが近いからか、学校中の男子がソワソワしている……ように見える。


特にうちのクラスは、康介が連日女の子から呼び出されているからか、みんな嫌でも意識させられるんだと思う。


今日も呼び出されている康介を横目に私は美月と話していた。


「もちろん由奈はあげるんでしょ?佐々木くんに」


「うん!去年は受験で何もできなかったし、今年は頑張って手作りしようと思ってて絶賛特訓中!」


「いいな〜由奈は。私も彼氏ほしいなぁ」


「そういえばクリパで結構沢村くんと話してたけど、美月的にどうなの?」


沢村くんの美月への気持ちを知っている身としては、アシストしてあげたかった。


「ん〜面白いし楽しいんだけど、なんか違うっていうか……」


そう言って美月は窓際の方へ顔を向けた。


目線の先には沢村くんと、戻ってきた康介が一緒に漫画を読んで笑っている。


「私的には、もう少しクールさもあってほしいかなぁって……」


美月は向こうを見つめたまま、そう言い足した。


私もそれ以上余計なお節介は焼かないでおく。


この時、美月は一体誰のことを思い浮かべながら話をしていたのか。


そして、彼女が本当は沢村くんと康介のどちらを見つめていたのか。


当時の私はそんなところに全く疑問を抱かなかった。
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