あの日、桜のキミに恋をした

決意のその先

Side 由奈 


あれから先輩とはよく屋上で話すようになった。


先輩の髪の毛の謎も解けた。


あの色は元々で、パーマもかけていないらしい。


学校が発行した茶髪の証明書もちゃんと持っていたから思わず笑ってしまった。


どうして私が妊娠していると思ったのか聞いたら、「なんとなく」と言われた。


先輩のお母さんは助産師で、家で助産院をやっているらしい。


昔から家には妊婦さんがいて、先輩はその手伝いもしていたそうだ。  


だから、妊娠している女性の雰囲気がなんとなく分かることがあると話していた。


そういう環境で育ったからか、先輩の夢は産婦人科医になること。


今は医学部を目指している受験生だ。


「先輩。助産院って、病院とは違うんですか?初めて聞いたからイメージ湧かなくて……」


「医者がいないから病院とは違うな。簡単に言うと、助産師が運営する病院的な。ほら、普通の病院は医者が中心な所が多いと思うけど、助産院は妊娠中も出産も産後も全部助産師が診るんだよ。もちろん条件はあるけどな」


「なるほど……」


今私は家から離れた産婦人科病院の外来で健診をしている。


私自身もそういう所で産まれたとお母さんが言っていたし、病院以外にも産む場所の選択肢があるなんて知らなかった。


——助産院って一体どんな所なんだろう……?


別に今の病院に不満はないけれど、先輩の話を聞いていたら、助産院という所にとても興味が湧いた。


「良かったら放課後来てみるか?いつでもウェルカムだぞ」


そんな先輩のお言葉に甘え、私は放課後に先輩の家にお邪魔することになった。
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