あの日、桜のキミに恋をした
俺たちが別れたという話は瞬く間に学校中に広まった。


それからしばらくして、夏休みが明けると由奈は学校を辞めていた。


家庭の都合で引っ越すことになったと担任から説明があったが、あまりに突然のことで教室は騒つく。


誰も、何も、聞いていなかったし、橘さんですらこのことを知らなかったのだ。


俺は正直ホッとした。


卒業まで同じ学校、同じクラスで過ごすのは耐えられなかったと思う。


彼女のことを憎めれば楽だっただろうに、俺にはそれができなかった。


だから、彼女がいなければ、自分の気持ちもそのうち冷めると思った。


それなりに勉強して、とりあえず卒業できればそれでいい。


もはや大学に行く意味も、警察官になる理由もなくなったけど、頑張れと応援してくれた親父と兄貴のためにそこまではやり切ることにした。


あとはもう、どうでも良かった——。
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