冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
急に自分に矛先が向いて日奈子はしどろもどろになった。

同僚のひとりのつてで計画されている来週の飲み会は、合コンではないという話だが、人数を合わせないだけで向こうは男性グループでこちらは女性グループなのだから意味合いは同じのように思う。

二十六歳にもなってまだ一度も彼氏ができたことがない日奈子を心配して、莉子からは絶対に参加するよう言われている。

「まだそんなこと言ってるの?」
 
莉子が呆れたような声を出した。

「だって、そういうの慣れてなくて……」
 
彼氏どころかそういう場に参加したこともない日奈子は、二の足を踏んでしまう。そもそも彼氏が欲しいとも思っていないのだから、なおさらだ。

「慣れてないって、日奈子って箱入り娘なんだ」
 
ロッカーの向こうの同僚に言われて日奈子は首を横に振った。

「そんなんじゃないよ。ただちょっと家が厳しかったから、学生時代はこういうの、あまりいい顔されなくて」
 
正確には厳しかったのは家族ではなく家族のような存在のある人なのだが。

「ふうん、でももう社会人なんだから、関係ないじゃん。とにかく日奈子は絶対参加だからね。好きな人はいないんでしょう?」

「うん……まぁ」

その時、日奈子の携帯が震えてメッセージが到着したことを知らせる。画面を確認して、どきりとした。

「あ、私、もう行かなくちゃ」

「え? 日奈子」

「ごめん莉子、その話はまた明日!」

慌てて着替えを済ませて、ロッカールームを飛び出した。
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