冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
《睡眠時間は、ちゃんと取ってね。楽しそうな予定があっても削っちゃダメ》
 
母のノートにそう書いてあったから。
 
——でも。

「……一日くらい、いいんじゃないかな」
 
日奈子がぽつりと呟くと、莉子が首を傾げた。

「え? なに? 日奈子」

「一日くらい大丈夫だよ。この日にしよう。ここを逃したら来月になっちゃう。私それまで待てないもん」

「おー! 言うじゃん。日奈子もアジアン料理にハマったな? 熱心に勧誘したかいがあるよ」
 
莉子が嬉しそうに言った。

「じゃあ決まりだね。大丈夫、眠くてもさ、トムヤムクン食べたら目が覚めるから」

「あれは痺れる辛さだよね」
 
あははと笑いながら日奈子は予定を携帯に入力する。

顔を上げると、莉子がジッとこちらを見ていた。

「なに? 莉子」

「日奈子さ、なにかいいことあったでしょ?」

「え⁉︎」
 
唐突に問いかけられて日奈子はドキッとする。
答えられないでいると、莉子がニヤニヤとした。
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