冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「なんか今日の日奈子は、いつもと違う気がするな。飲みもランチもイベントも誘えば来てくれるけど、自分から誘ってくれるのはじめてじゃない? なんか積極的っていうか。ただガパオライスにハマったってだけじゃないような……。なにかなんかいいことあったんじゃない?」

「え! えーっと……」
 
今日の日奈子が、莉子の目から見て変わったというならば、それは確実に宗一郎とのことがきっかけだ。でもそれをそのまま言うわけにいかなかった。

「えーっと」
 
莉子がむふふと笑った。

「まぁ、無理には聞かないよ」

「う……ごめん」

「いいよ、いいよ。でも絶対いいことでしょ。なんか今日の日奈子、いい感じだもん」
 
そう言って莉子はロッカーを開けて着替え始める。

「いい感じ……」
 
携帯のスケジュール帳の『莉子とガパオライス』の文字を見つめながら、日奈子は呟いた。
 
宗一郎と過ごしたあの休日から、自分で自分が変わりはじめているのは感じている。

ノートに書いてあることだけではなく、自分がしたいことを自分の頭で考えてするようになったのだ。
 
自分の人生を生きている。母が亡くなってはじめてそう感じている。
 
きっかけは、宗一郎に『愛してる』と告げられたからに違いない。
 
愛する人に愛されていたという喜びが、日奈子の心に衝撃を与え、溶かし始めたのだ。
 
母は怒るだろうか、と日奈子は思う。
 
宗一郎を好きになってはならないと、わざわざ書き遺したのにと。
 
——それでも。
 
今、日奈子に起きている変化は、きっと喜んでくれるはず。
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