冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
時間が気になるのだろう、腕時計を見ながら母親が廊下に出る。
そのままエレベーターの方へ行こうとするのを美鈴が呼び止めた。
「あ、お母さん」
母親が振り返った。
「元気でね」
「あら、なあに? ダメよ。あっちへ行く前にもう一度くらいこっちへ顔を出しなさい」
「うん、そのつもりだけど。私、本当に忙しいのよ。もしかしたら、無理かもしれないから、念のため言っとく」
そして彼女は母親がなにか言う前に「じゃあね」と言って、扉を閉めた。そのまましばらく扉の前でたたずんでいたが、やがて振り返り微笑んだ。
「鈴木さん、ありがとう。イレギュラーなことお願いしちゃって申し訳なかったわ。私と母親、親子なんだけどどうも考え方が全然合わないの。それなのに無駄に気が強いとこだけ似ちゃったみたい。あなたがいたおかげで、今日はいつもみたいに言い合いにならずに済んだ。助かったわ」
「私はなにも……ですが、お役に立てたのならよかったです」
日奈子がそう言うと、彼女は無言で窓辺に歩みより、窓からの景色を見つめた。
「最後だから、喧嘩したくなかったの。……よかった」
最後という言葉に息を呑む日奈子を見て、美鈴がふっと笑った。
「私、もうすぐ婚約者のところへ行くのよ。モデルもやめて、生まれた家を捨てて。いわゆる駆け落ちね。ロマンチックでしょう?」
そのままエレベーターの方へ行こうとするのを美鈴が呼び止めた。
「あ、お母さん」
母親が振り返った。
「元気でね」
「あら、なあに? ダメよ。あっちへ行く前にもう一度くらいこっちへ顔を出しなさい」
「うん、そのつもりだけど。私、本当に忙しいのよ。もしかしたら、無理かもしれないから、念のため言っとく」
そして彼女は母親がなにか言う前に「じゃあね」と言って、扉を閉めた。そのまましばらく扉の前でたたずんでいたが、やがて振り返り微笑んだ。
「鈴木さん、ありがとう。イレギュラーなことお願いしちゃって申し訳なかったわ。私と母親、親子なんだけどどうも考え方が全然合わないの。それなのに無駄に気が強いとこだけ似ちゃったみたい。あなたがいたおかげで、今日はいつもみたいに言い合いにならずに済んだ。助かったわ」
「私はなにも……ですが、お役に立てたのならよかったです」
日奈子がそう言うと、彼女は無言で窓辺に歩みより、窓からの景色を見つめた。
「最後だから、喧嘩したくなかったの。……よかった」
最後という言葉に息を呑む日奈子を見て、美鈴がふっと笑った。
「私、もうすぐ婚約者のところへ行くのよ。モデルもやめて、生まれた家を捨てて。いわゆる駆け落ちね。ロマンチックでしょう?」