冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「今日はバタバタして悪かったな」
 
日奈子のマンションのすぐ近くに車を停めて、運転席から宗一郎が日奈子を見た。

「そんなことは……。旦那さまと奥さまにお会いできて嬉しかったし」
 
九条家での会話の後、すっかり動揺してしまった日奈子は、疲れたから帰りたいと三人に告げた。

そしてそのまますぐに宗一郎ともにマンションへ帰ってきたのだ。
 
ここまで来る途中、日奈子は、敬子と宗一郎それぞれからメッセージを受け取った。

どちらも"宗一郎と日奈子が結婚すればいいと言ったのは冗談だから本気にしないように。変なことを言って申し訳なかった"という内容だった。
 
どうやらふたりとも日奈子が動揺したのは、宗一郎と結婚したらどうだと言われたからだと思ったようだ。

兄のように思っている相手と結婚などという無理難題を言われて日奈子がつらくなってしまったと。
 
それは、宗一郎も同じようだった。

「さっきの母さんの話は気にしなくていいからな。はじめに言った通り、たとえ日奈子が俺を男として見られなかったとしても、日奈子が大切なのは変わらない。父さんと母さんにとっても」
 
真剣な表情で念を押す。
 
日奈子は首を横に振った。

「それは心配していないけど……」
 
だけどどう考えればいいかそれがはっきりわからなくて、混乱している。
 
宗一郎に愛されて日奈子の心の扉は開いた。

母だってその日奈子の変化自体は喜んでくれるはずと今は確信している。でも宗一郎とのことはまた別で、許してはくれないと思っていた。でもそもそも母が勘違いをしていたのなら……。
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