冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
だけどそれを母に伝える手段はもはやない。母はもういないのだから。
 
日奈子の中に存在する宗一郎の愛に応えたいという強い思い。この思いに素直に従ってもいいのだろうか?
 
母には伝わるはずと解釈して?

「日奈子……?」
 
心配そうに自分を見つめる宗一郎の瞳に向かって、日奈子は問いかける。

「宗くん、大奥さまは私と宗くんが結婚しても本当に失望されない?」
 
宗一郎が目を見開いた。
 
その問いかけで、日奈子が心配していたことの内容が少し伝わったようだ。
 
日奈子の両肩を掴み真っ直ぐに日奈子を見た。

「大丈夫、彼女はそれを望んでいた」
 
力強い声で言う。
 
少し踏み込んだ表現に、日奈子は首を傾げた。

「望んでいた……?」

「いや、相手が日奈子だとは思っていなかったが、俺が心から愛する相手と一緒になることを望んでいた。それがひいてはホテル九条の発展に繋がるからだ」
 
そう言って彼は、肩の手に力を込めた。
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