冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「俺はずっと、ホテル九条と従業員、ホテルを訪れるお客さまのために生きろと言われてきた。それが使命だというならば、そうする覚悟もある。だがその重圧に耐え続けることは簡単ではないのも確かなんだ。それを身をもって知っているのは彼女だけだ」
 
彼の祖母は、息子ではなく孫である宗一郎にホテル九条の運命を託した。

宗一郎にその資質が備わっていると思ったからだが、同時にそれがどれほどつらい人生になるかも知っていた。

「祖母からは、ホテル九条のためにすべてを捧げろと言われていた。だが結婚相手だけは、……慎重に選ぶべきではあるが、家柄や会社の利益は考えずに、本当に心許せる相手にしろと言われていた。そうでなくては大企業のトップに立ち続けるという重圧に耐えられないからな」
 
宗一郎の口から語られる富美子の言葉の真意は重いものだった。

いばらの道を歩ませる孫に対する思いやりというよりは、あくまでもホテル九条を末長く存続させるためなのだから。

それでも生きていたら、日奈子との結婚を反対しなかっただろう。

「実際、今まで来た見合い話の中には会社にとって非常に有利になるものもあったよ。受けていればもっと楽に、もっと早く業績を回復できただろう。そしてこれからの経営も格段にやりやすくなる」
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